これからテイクアウトサービスを始める飲食店向けの営業許可の要否
カフェや飲食店で新たにテイクアウトサービスを始めたいときは、開業時に取得する飲食店営業許可や喫茶店営業許可のほかにも、新たに届出や許可が必要となる場合があります。この許可は、飲食を提供する場所やテイクアウトの方法によって、必要の有無や種類が異なってくるため注意しなければなりません。今回は、営業許可が必要・不要なケースの説明と許可の申請方法について解説します。
営業許可の要否
既に飲食店を経営していれば、飲食店営業や喫茶店営業の許可を取得しているでしょうが、提供する食品や場所などによっては新たに許可が必要となる場合があります。安易に自己判断でテイクアウト販売をしてしまうと、最悪、営業停止処分となってしまいますので要注意。テイクアウトで届出が必要かどうかはケースバイケースです。ただ、判断基準となるポイントが「販売方法」と「販売する商品の種類」の2点であることは認識しておきましょう。
1-1.許可が不要な場合
許可が不要な場合について紹介します。
店舗内で調理したものを販売する場合
既に飲食店の営業許可を取得しており、提供メニューをそのままパックや袋詰めにして販売する場合は、新たに営業許可の取得は必要ありません。例えば、カフェのランチをそのままパックに詰めてお持ち帰り、喫茶店でドリンクだけテイクアウトといった場合です。これは、飲食店の営業許可を申請したときに、既に衛生上の基準は満たしていると判断されているためです。
新たに許可が必要な場合
許可が必要となる代表的なケースを4つ紹介します。
店舗外で調理したものを販売する場合
テイクアウトのために店舗や設備を用意し、そこで調理したものを販売する場合は、新たに保健所の手続きが必要となります。店舗外での飲食の提供には、食中毒のリスクが伴います。梅雨時や夏場は特に大変です。店舗内であればある程度衛生面に目が行き届くものの、店の外ではそのコントロールが難しいため、通常の飲食店の営業許可に比べると取得が厳しいことを覚悟してください。
屋台で調理して販売する場合
屋台での調理や販売は衛生面において心配事が多いため、基本的に定められた期間以外では認められません。異物混入や食品の温度管理が徹底できないなど、食品衛生上の問題が起りやすいためです。これについての明確なガイドラインもありません。従って、祭りや花火大会、餅つきといったイベントの時だけ一時的に屋外での営業や販売が許され、届出や許可が必要となるわけです。屋台販売をしたい場合は、保健所において個々の内情を説明し許可を得ることになります。
移動販売で販売する場合
移動販売はキッチンカーやフードトラックとも呼ばれていますが、主に車内で調理するケースと、店で調理済みのものを移動して販売するケースに分かれます。
例えば、自宅やカフェで調理をしたものを販売する場合や、車内に調理場を設けて調理営業する場合などが挙げられます。移動販売に使う自動車は、食品営業自動車、食品移動自動車のどちらかです。保健所は車の使用に関して許可を出しますが、営業の許可は各自治体で取得しなければなりません。
食品営業自動車では、焼き鳥やお好み焼き、クレープ、サンドイッチ、ホットドックなどが車内で調理販売できます。生ものは提供できません。自動車内で可能な調理法は、盛りつけや加熱処理、小分け等ごく簡単なものに限られています。飲食店営業許可・喫茶店営業許可・菓子製造業許可のいずれかを、販売する食品に応じて取得しなければなりません。食品移動自動車では、車内で扱えるものはあらかじめ包装された食品に限られています。調理加工はできません。移動式のスーパーや惣菜店、パン屋、弁当屋などがこれに当てはまります。対象となる許可には、食肉販売業・乳類販売業・食品等販売業といったものがあります。
この他にも、移動販売には食品営業許可や食品衛生責任者、8ナンバーも必要です。道路上で販売するなら道路使用許可を、公園内なら国土交通省から許可を得てください。
新しい食品を販売する場合
店舗で販売しているものとは別に、新しく食品を販売する場合も許可が必要です。特に重要なことは、ハムやアイスクリーム、菓子類などは、それぞれに食肉製品製造業・アイスクリーム類製造業・菓子製造業と個別に営業許可が必要となる点です。この規定は非常に細かく分類されているので、販売する食品がどの許可に該当するのかわからないことも多いです。
例えば、揚げ物や蒸し物、酢の物などは「そうざい製造業」に該当しますが、同じ加工品でもコロッケや餃子、ハンバーグは「そう菜半製品等製造業」に当たります。また、インスタントコーヒー、みそ汁の素、ふりかけ類は「粉末食品製造業」となりますが、ダシの素、カレー粉、七味唐辛子などは「調味料等製造業」に該当します。このようにわかりにくい分類もあるので、食品衛生担当者に事前に相談してから許可申請書を出しましょう。
営業許可の申請方法
営業許可の申請方法について、大まかな流れを解説します。
はじめに、営業所を所轄する保健所への事前相談からスタートです。食品衛生担当者に、施設の工事着工前の設計図を持参したうえで、食品衛生責任者や水質検査の有無について相談しましょう。次に、申請書類の提出です。個人と法人で提出する書類が異なりますので、工事終了予定の10日前には提出してください。個人の場合は、営業許可申請書1通、営業設備の大要・配置図2通、許可申請手数料、水質検査成績書、食品衛生責任者の資格を証明するもの(食品衛生責任者手帳など)が必要です。法人であれば、それら5種類の書類にプラスして登記事項証明書1通が必要です。
続いて、施設検査の打ち合わせを行ってください。担当者に工事の進行状況の説明や、連絡先、検査日時等を知らせておきましょう。打ち合わせが終わったら、いよいよ施設完成の確認検査に入ります。検査は営業者の立ち合いのもとで行われます。ここで施設基準に適合していないと判断されれば許可は下りません。指摘された箇所を改めて、再度検査を受けてください。検査で合格となれば、許可書が交付されます。ただし、交付までには数日かかるので、開店日については調整が必要です。営業許可書が交付されるまでは開店できませんので注意してください。最後に、営業許可書を受け取って無事に営業開始です。許可書受領の際は印鑑が必要となりますので、忘れずに用意しておきましょう。
テイクアウト客の効率的な集客方法は
軽減税率の影響でテイクアウトをする利用者が増える中、店舗の集客も最適化する必要があります。飲食店の情報は、パソコンやスマートフォンのインターネットサイトで調べる人が大半です。さらに、アプリでの情報収集は年々増加傾向にあるため、今後はアプリクーポンなどを使って集客を増やす方法が効率的かつ効果的といえるでしょう。サービス認知のためにプッシュ通知も有効です。
「ぐるなび」「食べログ」といった有名なグルメサイトに掲載することや自社のホームページを持つこともおすすめです。店舗情報やアクセス、価格といった基本情報だけでなく、キャンペーンやイベント、口コミ、写真などを載せると消費者にとってより店をイメージしやすくなりますので集客にもつながるでしょう。
まとめ
「料理がおいしい」「お菓子がかわいい」「安くてボリュームたっぷり」といった魅力的な店を作ったとしても、知ってもらわなければ人は来てくれません。テイクアウト販売も同じです。おいしい料理はもちろん大切ですが、販売する食品や店舗を知ってもらえるようマーケティング活動にも力を入れましょう。アプリでクーポンを発行し、プッシュ通知を活用するなど、積極的に情報発信を行ってください。